2022年3月27日

詩|わたしたち、春分から清明へ —小城弓子 またたきのは展にささげる

1241

うつくしい ということばでは足らない
やさしい ということばでも足らない
ありがたい ということばでもない                                                                           
あたたかいでも やわかいでも 足りない

                                                                                                  
これは 円をつくっていくときにうまれる 
統(す)ぶるちから
春のあわい夢をうむ みなもと
闇のなか 静謐をやどす いずみ

この静けさを あなたは聴いたことがあるか
わたしはなかった
でも 思い出しました この鉛筆の漆黒とひかりに浸るなか

息をはいてはいてはいてはいて
はいてはいてはいた先にある扉の向こう
わたしをたしかに活かしている存在
それは この静けさでありました

清らかということばでも足りない
ましてや かわいいとか あいらしいとか でもない
かしこいという ことばでもない

ここにあるのは 存在の確かさ
存在の奥の奥の またその奥にある静けさ

静けさへの信頼
その静けさは すべての人に宿る静けさと つながっているという確さ
めくばせでわかるこの安心感 (やっぱりね)
この確さをしかと胸とおなかで受け止め
友らよ、これから わたしたち、しっかりあゆんでいけそうです

堂々とした静けさが
今、ここにあらわれた

あかんぼうのくちびるの輝き
まつ毛にのこった一滴のちいさな涙
新緑の萌えるときに はっせられる あの息づかい
空中にただよう思いと思いのあいだ

あなたも思い出すでしょう
自分のなかにこの静けさを
またたきとまたたきのあいだ
またたきのうまれるこのとき
またたきの、この響きに

わたしも、龍に、こんにちはというよ
ときは、いよいよ 清明*です

*清明……二十四節気の第5。旧暦2月後半―3月前半。万物が清々しくあかるくうつくしい頃。

服部みれい
2022年3月25日 春の朝に