2017年2月15日
納得して生きる

どん底を知った人は、本当に陽気だし、
極めて厳しい世界を覗き込んだことのある人は、どこまでもやさしいと思う。
何のために生きるのか、よくわからないけれど、
でも生きるならば、いろいろなことに納得して生きていたいな。
こないだピアノの教室で
バルトークのミクロコスモスの何番かを弾いてパッと先生を見上げたら、
少し涙ぐんで「アマチュアの人の演奏は、
時にすごくいいものがある」と言った(先生はすごくよく感動する)。
「どうしてですか」とたずねたら、
プロのようにテクニックに走らず、
また大勢の人にウケようと思っていないところ、
誰か一人だけに聴かせようとするような演奏が、
時にすごく感動的になることがあるという。
その日のバルトークは特に自分では
うまくいったような気がしなかった。
やっとこさ、1曲弾いた。
でも、バルトークのミクロコスモスを弾くのは本当に好き。
メロディラインが今っぽいし、自分がのっていく感じがある。音の中に入るというか。
わたしは、先生に、
「わたしはピアノを誰のためにも弾いていない。
わたしはわたしのために弾いている。観客はわたし一人だ」と言った。
後から振り返ってみたら、ずいぶんとかっこいいこといったものだけれど、本当だ。
仕事は、どこか人のためにやっているところがある。
人を喜ばせようとする気持ちがある。
でも、ピアノは違う。自分のためだけに弾いている。
自分だけの喜びのために。
自分が自分という存在を納得する、
そういう瞬間のために。