2017年2月15日

納得して生きる

R0059123

どん底を知った人は、本当に陽気だし、

極めて厳しい世界を覗き込んだことのある人は、どこまでもやさしいと思う。

何のために生きるのか、よくわからないけれど、

でも生きるならば、いろいろなことに納得して生きていたいな。

 

 

こないだピアノの教室で

バルトークのミクロコスモスの何番かを弾いてパッと先生を見上げたら、

少し涙ぐんで「アマチュアの人の演奏は、

時にすごくいいものがある」と言った(先生はすごくよく感動する)。

「どうしてですか」とたずねたら、

プロのようにテクニックに走らず、

また大勢の人にウケようと思っていないところ、

誰か一人だけに聴かせようとするような演奏が、

時にすごく感動的になることがあるという。

その日のバルトークは特に自分では

うまくいったような気がしなかった。

やっとこさ、1曲弾いた。

でも、バルトークのミクロコスモスを弾くのは本当に好き。

メロディラインが今っぽいし、自分がのっていく感じがある。音の中に入るというか。

わたしは、先生に、

「わたしはピアノを誰のためにも弾いていない。

わたしはわたしのために弾いている。観客はわたし一人だ」と言った。

後から振り返ってみたら、ずいぶんとかっこいいこといったものだけれど、本当だ。

仕事は、どこか人のためにやっているところがある。

人を喜ばせようとする気持ちがある。

でも、ピアノは違う。自分のためだけに弾いている。

自分だけの喜びのために。

自分が自分という存在を納得する、

そういう瞬間のために。