2014年7月3日

ホドロフスキーのDUNE

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ナナロク社の川口恵子さんが、いつもは、そうだな、80cmくらいは距離を置いて話すのに、その日だけは、20cmくらいわたしに近寄ってきて、「ホドロフスキー、ホドロフスキー」という。何かと思ったら、映画『エル・トポ』の監督さんのことで、「とにかく服部さんにドキュメンタリーと最新作を観てほしいッ」と小さな「ッ」つきでいう。メモを残した上に、翌日メールまできた。こんなに川口さんがしつこいのもめずらしくて、公開になるやいなや、『ホドロフスキーのDUNE』を観てきた。未完のSF超大作にまつわるドキュメンタリー。わたしは、よく、雑誌や本をつくっていると「脳内校了」をする瞬間がある。発想してしばらくした時点で、確実に脳内でできあがる瞬間があるという意味だけれど、そもそも作品って、その時点で「できあがっている」の、か、も、し、れ、な、い、ね(話が壮大すぎて、ことばがついとぎれとぎれになっちゃったよ)。作品をつくるということが根源的にどういうことなのか、つきつけられるドキュメンタリーだった。いや、ホドロフスキー監督は、実際、世界を飛び回り、かなり制作も進めてもいて、それが頓挫した体験って、やっぱり激しいものがある。しかし、その後、監督にやってきたのは、何がどうあっても崩れない、宇宙規模の肯定のメロディだった。編集者、あるいは編集者的な仕事をしている人にとっては、画家のダリを口説いたくだりを観るだけでも、観る価値あり、なはず(あんな経験してみたいぜい)。いや、ものづくりをしている人には、ちょっとたまんないドキュメンタリー、に、ちがいないです。85歳で監督をしたという最新作『リアリティのダンス』ももうすぐ公開とか。川口さん、観てくるね。