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『わたしのヒント』

  • 大和書房=刊
  • 2015年10月23日発売

『マーマーマガジン』を創刊したころ、あまりにもその存在が知られていなさすぎて、ひとり宣伝活動のためにこつこつとブログをはじめた。やがてブログという形態も自分にとって自然ではなくなって(誰もが見ることができるというのはそれなりにそれなりなものなのですね)、2011年からメルマガになり、そのメルマガの中から「これは」というものを選んで1冊の本に編んだのがこの本。種が芽を出し、畑になって、それなりの収量になって、あるひとつの加工品になったような感じ。メルマガという媒体は、想像以上にユニークだと思う。ある熱をもった読み手に、毎週毎週、送られる手紙−−というのは、思っていたよりも、こう、なんというか、ある「空気」がつくられる(自分でいうのも何だけれど、この空気はけっして閉鎖的なものではないと思う)。その空気によって、書き手は書かされる。眠りながら書くような日もある。この体験が本当にすごい。書いているのは、もうわたし自身ではなく、その「空気」であり「読み手」の方々なのではないかとすら思う。実際、お便り交換も濃密で、この本のクライマックスはなんといっても、読者のかたからのお手紙掲載の箇所だ。何度読んでも涙がでます。とてもユニークな、また安心してたのしめる媒体、またそのような媒体を支えてくださる読者の方にめぐまれて、わたしは、とても幸運な書き手だとつくづく感じ入っている。これは、わたしがあなたであなたがわたし、というようなふしぎさがつまっている本でもある。ということで、わたしのヒントの「わたし」とは、服部みれいのことではなく、みなさんおひとりおひとりのことなのであります。ほんとうに、こっそりと、あたらしい本。